整形外科

整形外科とは

整形外科は運動器、特に四肢の骨・関節・靭帯、腱や末梢神経などの外傷や疾患に対し装具や運動療法や投薬、注射などの保存療法または手術により治療する診療科です。
四肢の外傷、骨折に高い技術力で対応し、機能回復に努めています。また社会の高齢化に伴い変形性関節症、脊柱管狭窄症、関節リウマチ、骨粗鬆症などの慢性疾患が増加しており、少しでも症状が改善するよう日々の診療を行っております。

主な手術症例
人工関節置換術、人工骨頭挿入術、観血的骨接合術、靱帯再建術、経皮ピンニング、骨髄炎、ヘルニア摘出術、関節内骨折手術、鏡視下半月板切除術 
腱縫合術、神経縫合・移行術、断端形成術など
2009年手術実績:350件

当院整形外科の治療

骨折・外傷
骨折・外傷

交通事故・労働災害などに伴う一般外傷・骨折の手術は、できるだけ小さなキズで、専用の金属などで強固な内固定を行います。ギプス固定や安静期間を短縮することで、患者さんの身体や精神的、経済的負担を出来る限り少なくするように心がけています。

例:鎖骨骨折

当院では神経ブロックにてピンによる小切開(約0.5cm)の内固定手術を行っています。全身麻酔と比べ体に負担が少なく術後の安静期間が短い麻酔です。また保存療法より外固定期間が短縮でき、骨癒合後の変形も少なくて済みます。

関節リウマチ

関節リウマチ

関節リウマチとは、関節に炎症を起こす病気です。初発症状として、手や指の関節の「こわばり」や「腫れ」が起こります。

ほっておくと徐々に炎症が進行し、関節の軟骨や骨を破壊して変形が起こります。

最近の治療では、注射や点滴などで関節破壊を抑えることが出来るようになりました。当院では、患者さんの症状に合わせた治療方法を選択して行っています。

手や指の関節が多いですが、膝や股関節、足から発症することもあります。
しかしそれとは別に年齢による変形の痛みもありますので、ぜひリウマチ専門医への受診をお勧めします。

人工関節とは?

人工関節という言葉に馴染みのない方も多いと思いますが、現在日本では1年間に人工股関節手術が7万例、人工膝関節手術が9.5万例行われており年々増加しています。部位としては股関節と膝関節で人工関節手術の97%を占めています。人工関節手術とは関節の軟骨が摩耗し痛みを感じるようになった変形性関節症や関節リウマチの方に対して、関節を金属に置き換える手術であり、手術後は現在感じている関節の痛みが軽減した日常生活が送れるようになります。

股関節痛にお悩みの方へ

股関節の病気

股関節は骨盤側の寛骨臼(臼蓋)とよばれる受け側と大腿骨側の大腿骨頭とよばれる球状の骨からなります。寛骨臼と大腿骨頭の表面は正常では軟骨で覆われており痛みを感じることなくスムースに動きますが、何らかの理由(生まれつき関節の適合性が悪い臼蓋形成不全・股関節周囲の骨折後に生じる外傷性の変形性股関節症・大腿骨頭への血流が悪くなる大腿骨頭壊死症・関節リウマチなど)で軟骨組織がすり減ると、正常な股関節の動きが制限され股関節に痛みを感じるようになります。

股関節の病気
人工股関節全置換術とは?

人工股関節全置換術は骨盤側と大腿骨側に金属を固定して股関節機能を再現する手術です。

骨盤側:寛骨臼の表面を球状に削りチタン合金製のカップをはめ込んで固定します。さらに関節側には軟骨の代わりとして特殊なポリエチレンやセラミックなどの摩耗の少ない素材を固定します。
大腿骨側:大腿骨頭を切除しそこから大腿骨の中(髄内)にステムとよばれるチタン合金製の金属を挿入してしっかりと固定します。ステムの関節側には球状の金属やセラミック製の骨頭を固定します。ここでスムースな股関節の動きが再現されます。

人工股関節全置換術とは?
当院での治療方針

@輸血について 人工股関節再置換術(2回目の入れ換え手術)の時のみ、術前に自分の血液を貯血し、それを術後にもどす自己血輸血を行っています。初回の手術の場合は通常輸血を行うことはなく、体に負担のかかる自己血貯血の必要はありません。

A入院期間について 内科的な合併症がなければ手術の前日に入院し、術後10日程度で退院します。手術翌日には歩行器歩行を開始し、術後1週でT字杖を用いた歩行が可能です。

B最小侵襲手術(MIS: Minimally Invasive Surgery)について 最小侵襲手術とは皮膚切開を小さくし、筋組織などの軟部組織への侵襲を最少とした手術手技のことです。従来は20cm程度の皮膚切開を必要としていましたがMISでは10cm以下の皮膚切開で手術をします。当院では、通常は前方から筋間進入で手術を行う前方進入法を用いています。股関節の変形のが強い症例には後方から手術を行う後方進入法を用いていますが、前方進入法と後方進入法ともに10cm以下の皮膚切開で手術を行っています。

手術前後の単純X線像
手術前後の単純X線像

膝関節痛にお悩みの方へ

膝関節の病気

膝関節は大腿骨、脛骨(すね)と膝蓋骨(お皿)からなります。膝関節内は正常では軟骨で覆われており痛みを感じることなくスムースに動きますが、何らかの理由(膝関節内側の軟骨がすり減ったO脚変形・膝関節外側の軟骨がすり減ったX脚変形・膝関節周囲の骨折後に生じる外傷性の変形性膝関節症・大腿骨顆部への血流が悪くなる骨壊死症・関節リウマチなど)で軟骨組織がすり減ると、正常な膝関節の動きが制限され膝関節に痛みを感じるようになります。

膝関節の病気
人工膝関節全置換術とは?

人工膝関節全置換術は大腿骨側と脛骨側に金属を固定し、さらに膝蓋骨の内側にはポリエチレンを固定して膝関節機能を再現する手術です。

大腿骨側:大腿骨の膝関節部の表面を数ミリ削り、その表面に骨セメントを塗って金属を固定します。
脛骨側:脛骨の膝関節部を脛骨の軸に対して垂直に数ミリ骨切除し、その表面に骨セメントを塗って金属を固定します。関節側には軟骨の代わりとして特殊なポリエチレン固定します。ここでスムースな膝関節の動きが再現されます。
膝蓋骨側:膝蓋骨の内側にはポリエチレンを固定します。

人工膝関節全置換術とは?
人工膝関節単顆置換術とは?

膝関節の内側もしくは外側のみに限局した病変の場合は、片側のみの大腿骨側と脛骨側に金属を固定して膝関節機能を再現する手術です。

人工膝関節単顆置換術とは?
当院での治療方針

@輸血について 両側同時に人工膝関節置換術を行う時のみ術前に自分の血液を貯血し、それを術後にもどす自己血輸血を行っています。片側の手術の場合は通常輸血を行うことはなく、体に負担のかかる自己血貯血の必要はありません。

A入院期間について 内科的な合併症がなければ手術の前日に入院し、術後10日程度で退院します。手術翌日には歩行器歩行を開始し、術後1週でT字杖を用いた歩行が可能です。

B最小侵襲手術(MIS: Minimally Invasive Surgery)について 最小侵襲手術とは皮膚切開を小さくし、筋組織などの軟部組織への侵襲を最少とした手術手技のことです。従来は20cm程度の皮膚切開を必要としていましたがMISでは10cm以下の皮膚切 開で手術をします。当院では膝伸展機能にとって大切な大腿四頭筋への侵襲を少なくした手技を用い、かつ10cm以下の皮膚切開で手術を行っています。

手術前後の単純X線像(人工膝関節全置換術)
手術前後の単純X線像(人工膝関節全置換術)
手術前後の単純X線像(人工膝関節単顆置換術)
手術前後の単純X線像(人工膝関節単顆置換術)

膝半月損傷

膝半月損傷

スポーツや交通事故などによる膝関節の外傷には、半月板損傷や靱帯損傷があります。また年齢による変性断裂により、膝関節部痛を自覚することもあります。

MRIにて診断後、損傷部を関節鏡にて確かめ、切除または縫合を行っています。

膝前十字靭帯損傷

膝前十字靭帯損傷

膝前十字靭帯は、膝の前方への動きや、ねじれを制動しています。
そのため、切れたまま放置していると、膝関節の異常な動きが残るため、後になって、軟骨の磨耗や、新たな半月板損傷をきたす可能性があります。

前十字靭帯は切れた端を縫い合わせても癒合しません。
そのため、手術(前十字靭帯再建術)は内視鏡を使用し、採取しても影響が少ない自分の腱、ふとももの内側から膝にかけて走るハムストリングを利用します(前十字靭帯再建術)。

骨のトンネルを作製し、採取した腱を膝関節内に移植し、金属のボタンや金具で固定します。
手術の傷は、ハムストリング使用の場合、4〜5cmの傷が一つと、5mm程度の傷が数ヶ所必要となります。

手術後の経過は翌日から松葉杖なくても歩くことができます。術後4ヶ月〜5ヶ月で小走り(ジョギング)可能、術後5ヶ月〜6ヶ月軽いダッシュ可能、術後6ヶ月から全力疾走、スポーツ可能になります。

骨粗鬆症
採血にて骨代謝マーカーの測定及びDEXA(dual-energy X-ray absorptiometry)にて骨密度測定を行い、適正な診断、治療を行います。
上肢のスポーツ障害
反復性肩関節脱臼
症状
ほとんどのものが外傷性の脱臼に続発しておこります。ラグビー、アメフト、柔道などのコンタクトスポーツやスキー、スノーボードで多く発症します。肩関節は一度脱臼を起こすとその後は脱臼しやすくなり、脱臼の回数を増すごとに軽微な外力でおこるようになり、スポーツ活動ばかりでなく寝返りのような日常動作でも脱臼が起こりやすくなります。脱臼する方向によりますが、前下方に脱臼する反復性肩関節脱臼では、外転・外旋する動作に不安感を持ち、肩関節前方の不安定感があり、同部に圧痛があることが多いです。
原因と病態
初回の肩関節脱臼の年齢が若いと反復性脱臼に移行しやすいと言われています。10歳代に初回脱臼したものは、80〜90%が再発するのに40歳代以降では再発が少なくなるのが普通です。肩関節は上腕骨と肩甲骨との間の関節で、関節包や関節唇という軟部組織にささえられています。肩関節が脱臼すると、多くの場合この軟部組織がはがれたり切れたりして、安静にしていてもこれがうまく治らないことが、反復性脱臼(脱臼ぐせ)になってゆく大きな原因です。
診断
X線(レントゲン)検査で脱臼していることを確認します(図1)。脱臼していないときには、脱臼の既往があり、前下方に脱臼する反復性肩関節脱臼では、外転・外旋する動作で不安感が増したり、肩関節前方の不安定感や圧痛 があることで診断可能です。X線検査では、肩の2方向撮影に加えて内旋位前後方向撮影などで骨頭の陥凹などをみたり、関節造影やCT、MRI検査などで関節唇の損傷の 程度を診断します。
肩関節脱臼/整復後
予防と治療
脱臼を整復すればとりあえずは普通に使えるようになりますが、その後も日常生活あるいはスポーツ活動において脱臼を繰り返し、そのために活動が制限されるようならば手術が必要です。手術は肩関節鏡視下にはがれた軟部組織を元の位置に縫いつける方法や、骨や腱で補強する方法などがあります。
野球肘
症状
成長期にボールを投げすぎることによって生じる肘の障害を野球肘といいます。投球時や投球後に肘が痛くなります。
原因と病態
繰り返す投球動作で、肘の外側で骨同士が衝突して骨・軟骨が剥がれたり痛んだりします。また、肘の内側では靱帯や骨・軟骨がいたみます。
診断
レントゲン検査や超音波検査(図2,3)、MRI撮影で診断します。
超音波診断:野球肘内側型の骨形態分類(渡辺分類) 超音波診断:野球肘外側型(離断性骨軟骨炎)
予防と治療
肩関節や股関節など、肘関節以外の関節にも問題が生じていることが多く、全身のコンディショニングを調整して肘関節の負担を軽減させることが重要です。痛みを我慢して投球を続けていると障害が悪化し、手術が必要になることもあります。手術には、骨に穴をあける方法、骨を釘のようにして移植する方法、肋軟骨や膝の軟骨を移植する方法などがあります。
テニス肘
症状
ものをつかんで持ち上げる動作やタオルをしぼる動作をすると、肘の外側から前腕にかけて痛みが出現します。多くの場合、安静時の痛みはありません。
原因と病態
中年以降のテニス愛好家に生じやすいのでテニス肘と呼ばれています。一般的には年齢とともに肘の腱がいたんで起こります。病態や原因については十分にはわかっていませんが、主に短橈側手根伸筋という手首を伸ばす筋肉(腱)が肘外側で障害されて生じると考えられています。
診断
肘の外側での圧痛や疼痛を誘発するテストで診断します。補助検査として、超音波検査(図4)、MRI検査を行います。
超音波診断:テニス肘
予防と治療
スポーツや手をよく使う作業をひかえて湿布や外用薬を使用し、手首や指のストレッチを行います。肘の外側にステロイドを注射することや、テニス肘用のバンドを装着することがあります。これらの保存療法が無効な場合には、肘関節鏡視下手術を行うことがあります。

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